« すてきなパパたち | Main | フレンチ・トースト »

おじいちゃんの社長室

2年ほど前のこと、
僕の両親が営んでいた居酒屋が閉店することになりました。
経営不振が、その大きな理由です。

僕たちは落ち込みました。
娘と、障害者の兄だけが、僕たちを元気づけてくれました。

その居酒屋の厨房の裏に、
父親だけの小さなスペースがありました。
テレビとビデオがあり、椅子が一つ。
灰皿、老眼鏡、湯飲み、耳かきなどが、すぐ手に届くところにありました。
冬には、石油ストーブが置かれ、その上で、餅やパンを焼きます。
居酒屋が暇になるにつれ、皮肉なことに、
そのスペースは、ますます充実していきました。

娘は、そのスペースを、「おじいちゃんの社長室」と名づけました。
そこは狭いので、大人一人しか入れません。
だから、娘は僕の父の膝にのって、
いつも社長室で楽しそうに二人で過ごしていました。

店が暇になればなるほど、
娘はおじいちゃんを独占できて喜びました。
兄も誰かが近くに来てくれるので、うれしそうでした。

やがて、居酒屋はとりこわされ、社長室ももちろん無くなりました。
居酒屋は、貸事務所となりました。

「おじいちゃん、社長室なくなって、かわいそう」
と、娘は何度も言って、残念がりました。

父は、三十何年かぶりに、外に働きに出ることになりました。
老人ホームの調理師。
仕事は、お粥をミキサーにかけること。それだけ。

父は、どんなに小さくとも、自分の店を持っていたかったのでしょう。
小国が独立できなくなり、大国の植民地になったようで、悲しくなりました。
どんなに小さくても、独立することは、父の願いだったはず。

さて、父は、どうなったか。
老人ホームの仕事は、三日で辞めました。
さらに、大腸癌が発覚。
入院、手術、静養。

しかし、数ヶ月後、父は復活、
癌保険のお金を投入して、
もとは居酒屋だった貸事務所を、全面リフォーム。
なんと、ほとんど、自分一人で。
僕もうれしくなり、小説の原稿料のほとんどを、その店に投資しました。

そして、今、両親は小さな喫茶店を、営んでいます。
お寿司ランチの喫茶店。
父が考案したサンドイッチも好評なようです。

もちろん、社長室も、復活しました。
父は、さらに小さくなりながらも、独立をまた勝ち取ったのです。

娘よ、おじいちゃんの仕事の邪魔するなよ。

May every country be independent truly!

Love and Peace.

|

« すてきなパパたち | Main | フレンチ・トースト »

Comments

その老人ホーム惜しいことを・・・
と思います。
センスのある、料理に対して情熱とか誇りとか持っている職人さんが、うちの調理場にも欲しいです。そういう職人さんには、味付けの指導や、調理の本の一瞬のタイミングとか・・・盛り付けなどお願いしたいことがいっぱい。。。粥のミキサーだなんて・・・宝の持ち腐れですね~。
目の前で、握りだって握ってもらえたというのに・・・まったく。責任者の力のないこと・・・

そのおかげで、また社長さんになれたわけだし・・・それが お父さんの進む道だったのでしょうね~(*^。^*)

それにしても、海鮮サンド見てみたい・・・いや、食べてみたいです。ジュル(^^ゞ

Posted by: さっちゃん | February 26, 2005 at 08:15 PM

今は、その社長室、
僕が狙っています。
バーチャルではなく、リアルの、
ジロー's カフェをオープンするため。

虎視眈々Peace ^^v

Posted by: ジロー | February 27, 2005 at 11:29 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/25180/3082106

Listed below are links to weblogs that reference おじいちゃんの社長室:

« すてきなパパたち | Main | フレンチ・トースト »